大学共同利用機関である分子科学研究所は,国際的な分子科学研究の中核拠点として所内外の研究者を中心とした 共同研究と設備を中心とした共同利用を積極的に推進し,大学等との人事流動や国際交流を活性化しながら,周辺分 野を含めた広い意味の分子科学の発展に貢献する使命を持っている。
分子科学研究所が行う事業には,『先端的な研究を推進する拠点事業』,『国内の研究者への共同研究・共同利用支 援に関する事業』,『研究者の国際ネットワーク構築に関する事業』がある。予算的には運営費交付金の一般経費・特 別経費,文部科学省の委託事業,日本学術振興会等の競争的資金で実施している。運営費交付金の一般経費以外はい ずれも期間が定められており,運営費交付金一般経費も毎年削減を受けている。第1期中期計画期間に特別経費であっ た3事業(U V S OR 共同利用事業,エクストリームフォトニクス連携事業,研究設備ネットワーク事業)は平成22年 度からの第2期中期計画の開始において相当予算削減された上で一般経費化された。なお,スーパーコンピュータ共 同利用事業の特別経費については第1期中期計画期間の段階からすでに一般経費化されている。これら事業の継続は 認められているが,今後も運営費交付金一般経費の予算削減は続くと予想され,第1期中期計画期間と同じ水準での 事業実施は困難である。すべての事業の精査を行い,重点化するなど事業を絞り込むこと,また,新たな事業に機動 的に取り組むことが必要である。
(1)『先端的な研究を推進する拠点事業』としては,U V S OR 共同利用事業(放射光分子科学),エクストリームフォ トニクス連携事業(レーザー分子科学)に関連するものとして,文科省で「光・量子科学研究拠点形成」プロジェ クトが走っている。研究所としては,量子ビーム基盤技術開発プログラム(U V S OR が代表),光創成ネットワーク 研究拠点プログラム(分子科学研究所は分担)を受託,実施している。前者は平成24年度まで,後者は平成29年 度までの事業である。また,スーパーコンピュータ共同利用事業(理論計算分子科学)に関連するものとして,文 科省で「最先端・高性能スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクトが走っている。研究所としては平成18 年度より「次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発」拠点のナノ分野の「グランドチャレンジア プリケーション研究」を推進している。この事業は平成23年度で終了する。
(2)『国内の研究者への共同研究・共同利用支援に関する事業』のうち,実験研究のための共同利用は機器センター 及び分子スケールナノサイエンスセンターが担当している。機器センターでは,研究設備ネットワーク事業(平成 19年度から「化学系研究設備有効活用ネットワークの構築」,平成22年度より「大学連携研究設備ネットワーク による設備相互利用と共同研究の推進」)を進めており,分子スケールナノサイエンスセンターは,文科省の研究 施設共用イノベーション創出事業「ナノテクノロジーネットワーク」の「中部地区ナノテク総合支援」プロジェク トの幹事機関として,共同利用設備の共用を推進している。前者の大学連携研究設備ネットワーク事業については, 当初の3つの目的,全国的設備相互利用,設備復活再生,最先端設備重点配置のうち,第2期中期計画期間では, 最初のものだけが生き残り実施されることになったが,今後も運営費交付金の削減が予定されており,第2期中期 計画期間中に事業の方向性を見直す必要がある。一方,後者のナノテクノロジーネットワーク事業は運営費交付金 の事業ではなく,平成23年度で終了する。このような背景で,平成24年度以降の共同利用設備の安定的な運営を 勘案し,現在,分子スケールナノサイエンスセンターの共同利用設備も機器センターに集約し,予算面では運営費 交付金一般経費に頼るばかりでなく,組織的に適切な外部資金等を新たに獲得して,予算減を補うようにする方向 で検討が進んでいる。
5.各種事業
(3)『研究者の国際ネットワーク構築に関する事業』としては,個人ベースの萌芽的な取り組みと組織ベースの国際 共同研究拠点の形成がある。従来からの外国人顧問制度,客員外国人制度,招へい外国人制度,国際研究集会(岡 崎コンファレンスなど)を実施すると同時に,第1期中期計画期間から独自の分子研国際共同プログラムを進めて きた。このプログラムは個人ベースの国際共同研究のきっかけ(萌芽的国際共同)を作るものである。さらに国際 共同研究拠点として組織ベースで取り組むために,第2期中期計画期間においては,自然科学研究機構としての運 営費交付金特別経費で「自然科学研究における国際的学術拠点の形成事業」がスタートした。分子科学研究所では,
「分子科学国際共同研究拠点の形成」による新たな取り組みの検討とその準備(協定締結等)が始まっている。また, 日本学術振興会の多国間交流事業「アジア研究教育拠点事業」の一環として,「物質・光・理論分子科学のフロンティ ア」(平成18年度〜平成22年度)の事業を行ってきた。これまで5年間,日中韓台の4拠点(協定をそれぞれ締結) を中心にしてマッチングファンド方式での様々な試みを行った。平成23年度以降は,これまでの経験を踏まえて 精査を行った上で集中・重点化し,上記「分子科学国際共同研究拠点の形成」の予算枠で実施する方向で検討を行っ ている。また,分子科学研究所は,政府による21世紀東アジア青少年大交流計画(J E N E S Y S プログラム)の枠で 設定された日本学術振興会の「若手研究者交流支援事業」に平成20年度より毎年,応募・採択され,対象国の若 手研究者(院生を含む)の人材育成に貢献しているところである。このようにアジア地区の国際ネットワークを構 築すると同時に,さらに米国,欧州,インドとの国際共同研究を強化していく予定である。
5-1 大学連携研究設備ネットワークによる設備相互利用と共同研究の促進
(文部科学省)
化学系の教育研究組織を持つ全国の機関が結集し,全国的な連携調整の下に「老朽化した研究設備の復活再生」及 び「最先端研究設備の重点的整備」を行い,これらにより整備された設備及び既存の研究設備で外部に公開可能な設 備を対象として,全国・地域研究設備活用ネットワークを構築し,大学間での研究設備の有効活用を図ることを目的 として,「化学系研究設備有効活用ネットワークの構築」が平成19年度よりスタートしたが,平成22年度からは,「大 学連携研究設備ネットワークによる設備相互利用と共同研究の促進」として体制が整えられた。
本ネットワークには国立大学ばかりでなく,私立大学や企業も含めて全国79の機関が参加している。平成23年1 月18日現在,登録機器数は 342 台であるが,このうち外部公開設備は 264 台,学内専用設備は 78 台となっている。 今後,学内専用設備の登録が加速され,6,711 名のユーザーには自己の学内専用設備と全国公開設備の双方の予約が 可能となる。
平成22年度からは第2期中期計画時期に入ることもあり,化学系を越えたプロジェクトとして,「大学連携研究設 備ネットワークによる設備相互利用と共同研究の促進」という新たな課題の下に,共同研究の促進という一層の発展 を指向した提案を行い,協議会に於いて,平成22年度は25件の登録設備の活用を骨格とした共同研究プロジェクト と1件の復活再生が採択された。平成23年度も先端設備等相互利用設備を活用した全国・地域での複数の大学の研 究者による共同研究プロジェクトが実施される予定である。第2期中期計画の間は,この体制を維持することが,平 成22年3月の協議会に於いて決められた。この共同研究によって導入設備の一層の有効活用と研究者間のコミュニ ケーションの活性化が促進し,本事業の目的達成に相応しい実施体制が実現すると期待される。
一方,この予約課金システムを学内利用システムにも利用して頂き,学内専用設備と全国公開設備の予約システム の一元化を図っている。学内予約システムを整備し,学内専用予約システムに本システムを採用する大学が増加して いる。ソフトの維持管理や課金の自動化などに費用をかけずに相互利用を行う事が出来るのは多くの大学にとって大 きなメリットとなるであろう。
5-2 連携融合事業「エクストリームフォトニクス」 (文部科学省)
平成17年度から理化学研究所との連携融合事業として「エクストリーム・フォトニクス」を推進している。「光を 造る」,「光で観る」,「光で制御する」という3つの観点から,両研究所が相補的に協力交流することによって,レーザー 光科学のより一層の進展を図ろうとするプログラムである。分子研側からは,3つの観点のそれぞれにおいて以下の 課題を選定し,いずれも精力的に研究を推進してきた。
(1) 「光を造る」
「光波特性制御マイクロチップレーザーの開発」(平等) (2) 「光で観る」
「時間・空間分解分光による固体表面・ナノ構造物質表面における反応研究」(松本)
「エクストリーム近接場時間分解分光法の開発」(岡本) (3) 「光で制御する」
「アト秒コヒーレント制御法の開発と応用」(大森)
「紫外強光子場による反応コヒーレントコントロール」(菱川)
「高強度極短パルス紫外光を用いた超高速光励起ダイナミックスの観測と制御」(大島)
これらの課題の成果は,既にScience 誌,Nature Physics 誌,Physical Review Letters 誌,Nature Methods 誌などの超 一流の学術誌に度々発表されただけでなく,多数の新聞各紙で取り上げられ社会的にも大きな注目を集めた。また, 日本学士院学術奨励賞,日本学術振興会賞,アメリカ物理学会フェロー表彰,文部科学大臣表彰若手科学者賞,日本 化学会進歩賞,日本分光学会奨励賞,光科学技術研究振興財団研究表彰,英国王立化学会 P C C P 賞など,多くの権威 ある表彰の対象となってきた。また,マイクロチップレーザーの開発では,産業界との共同研究が進展した。
この他に,両研究所の研究打合せや成果報告のため,毎年2回,定期的に理研・分子研合同シンポジウムを開催し ている。平成17年度は,4月に理化学研究所にて第1回の合同研究会を開催した。この研究会では,各参加グルー プのリーダーがそれまでの研究成果を紹介した上で今後の研究計画を披露し,これを中心に議論を行った。これに対 して,11月には「分子イメージングとスペクトロスコピーの接点」を主題とした研究会を行い,より突っ込んだ議 論を進めた。平成18年度は,4月に理化学研究所にて第3回理研・分子研合同シンポジウムを開催した。このシン ポジウムでは特に「エクストリーム波長の発生と応用」をテーマとし,テラヘルツ光やフェムト秒X線の発生と利用 について議論した。さらに,11月には「コヒーレント光科学」を主題とした第4回の研究会を行い,この方面にお ける所外の研究者にも講演を依頼し,より突っ込んだ議論を進めた。平成19年度は,4月に理化学研究所にて「バ イオイメージング」をテーマに第5回シンポジウムを開催した。ここでは,高感度レーザー顕微鏡やテラヘルツ分光 を利用した生体系のイメージングについて議論した。さらに,11月には「先端光源開発と量子科学への応用」を主 題とした第6回シンポジウムを行い,高強度超短パルスレーザーを始めとする先端レーザー光源の開発と,それらを 原子分子クラスターあるいは表面ダイナミクスの観察や制御へと応用した研究成果と今後の展望について議論した。 平成20年度は,5月に理化学研究所にて「イメージング」をテーマに第7回シンポジウムを開催した。ここでは, 超高速分子イメージング;生体分子イメージング;テラヘルツイメージングについて議論した。さらに,11月には
「U l traf ast. meets. ul trac ol d」を主題とした第8回シンポジウムを行い,超高速コヒーレント制御や極低温分子の生成, およびそれらの融合が生み出す新しい科学に関する研究成果と将来展望について議論した。平成21年度は,5月に 理化学研究所にて「光で繋ぐ理研の基礎科学」をテーマに第9回シンポジウムを開催した。ここでは,これまでに本
事業によって推進された理研の光科学研究の成果を総括するとともに,今後の展開についての意見交換が行われた。 さらに,11月には蒲郡にて分子科学研究所が主催で「凝縮系における量子の世界」と題した第10回シンポジウムを 行い,固体やナノ構造体の量子性を対象にした新しい研究領域の可能性について議論した。平成22年度は,10月に 理化学研究所にて「顕微分光技術と生物科学との接点」をテーマに第11回シンポジウムを開催した。いずれのシン ポジウムにおいても,両研究所内外の研究者に講演を依頼し,関連分野の先端について深い議論を行った。
また,このプログラムを中心に,所内に日常的な議論の場としての光分子科学フォーラムを設け,光分子科学の進 展を図っている。
5-3 分野間連携(自然科学研究機構)
5-3-1 概要
自然科学研究機構の法人化後第1期中期計画期間(平成16〜21年度)には,新分野創成型連携プロジェクトとし て「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成事業」が行われたが,平成22年度から第2期中期計画期間となり, これが再編され「自然科学研究における国際的学術拠点の形成事業」と「新分野の創成」となった。
「自然科学研究における国際的学術拠点の形成事業」では,分子科学研究所,国立天文台,核融合科学研究所が共 同して進める「シミュレーションによる『自然科学における階層と全体』に関する新たな学術分野の開拓」,分子科 学研究所が主体的に進める「分子科学国際共同研究拠点の形成」等のプロジェクトが行われることとなった。(この 内前者には,平成21年度までに実施してきた「巨大計算新手法の開発と分子・物質シミュレーション中核拠点の形成」 及び「自然科学における階層と全体」が発展的に展開されることとなった。)またこの他に機構内で提案公募に基づ いて選考・実施する「若手研究者による分野間連携研究プロジェクト」を行い,分子科学研究所が中心となる課題と して平成22年度は2件が採択・実施された。
「新分野の創成」では,機構の新分野創成センターが主体的に行うプロジェクトが行われている。これには,平成 21年度まで「分野間連携」の一環として行われた「イメージング・サイエンス」が組み込まれる形となっている。
5-3-2 イメージング・サイエンス
(1) 経緯と現状
研究所の法人化に伴い5研究所を擁する自然科学研究機構が発足し,5研究所をまたぐ新研究領域創成の一つのプ ロジェクトとして「イメージング・サイエンス」が取り上げられることとなった。以下に,その経緯と現状について 述べる。
平成16年度に機構が発足した後,研究連携室で議論がなされ,機構内連携の一つのテーマとして「イメージング・ サイエンス」を立ち上げることが決定された。連携室員の中から数名の他に,各研究所からイメージングに関連する 研究を行っている教授・准教授1〜2名が招集され,「イメージング・サイエンス」小委員会として,公開シンポジ ウムその他プロジェクトの推進を担当することとなった。
平成17年8月の公開シンポジウム(後述)の後,小委員会において,本プロジェクトの具体的な推進について議 論を行った。この機会に,各研究所が持つ独自のバックグラウンドを元に,それらを結集して,広い分野にわたる波 及効果をもたらすような,新しいイメージング計測・解析法の萌芽を見いだすことが理想,という議論がなされた。 それに向けた方策として,機構内の複数の研究所にまたがる,イメージングに関連する具体的な連携研究テーマをい くつか立てる案を連携室に提案したが,予算の問題等もあってこれは実現しなかった。
その後,機構の特別教育研究経費「分野間連携による学際的・国際的研究拠点形成」の新分野創成型連携プロジェ クトの項目として,イメージングに関連した研究所をまたがる提案が数件採択・実施された(「イメージング・サイエ ンス—超高圧位相差電子顕微鏡をベースとした光顕・電顕相関3次元イメージング—」など)。これが上述の提案に代 わるものとして,「イメージング・サイエンス」に係る具体的な機構内連携研究を推進した。平成20年度には,岡崎 統合バイオサイエンスセンター(生理研)の永山教授を中心に再編された小委員会が招集され,国立天文台に設置さ れた一般市民向け立体視動画シアター「4D 2U」(4-dimensional.to.you)を利用した,広報コンテンツ作成に関する検討 が開始された。5研究所がもつイメージングデータを元に,機構の研究成果を一般市民向けに解説する立体動画集の 制作を目論んでいる。同時に,イメージングを中心とした機構内連携の新たな展開について議論を行っている。平成
21年度に機構本部の下に,5研究所が連携して自然科学の新しい分野や問題を発掘することを目指して,新分野創 成センターが設置され,その中にブレインサイエンス研究分野及びイメージングサイエンス研究分野がおかれた。イ メージングサイエンス研究分野は5研究所から1名ずつの併任教授が就任した。また外部からの任期付き客員教授1 名及び実動部隊としての博士研究員若干名を公募し,上述のようなイメージングコンテンツの新たな表示法や,イメー ジからの特徴抽出の手法等の開発を推進することとなった。現在客員教授及び博士研究員2名が,実際の活動を行っ ている。平成22年度には,イメージングサイエンス研究分野所属の研究者と,関連する分野の大学の研究者が集まり, 新たな「画像科学」を展開する研究領域を立ち上げる活動の模索を開始した。
(2) 実施された行事
このプロジェクトの具体的な最初の行事として,各研究所のイメージングに関わる興味の対象と研究ポテンシャル を,5研究所が互いに知ることを目的として,「イメージング・サイエンス」に関する公開シンポジウムを開催する こととなった。
平成17年8月8日−9日に,「連携研究プロジェクト Imaging.S cience 第1回シンポジウム」として,公開シンポジ ウムが岡崎コンファレンスセンターで開催された。このシンポジウムでは,天文学,核融合科学,基礎生物学,生理学, 分子科学におけるイメージング関連研究に関する,機構内外の講師による16件の講演,及び今後の分野間連携研究 に関する全体討論が行われた。参加者は機構外36名,機構内148名,大学院生80名,合計264名を数えた。また, 講演と全体討論の内容は,175 ページのプロシーディングス(日本語)としてまとめられ,同年12月に発行された。 この機会によって機構内のイメージング・サイエンス関連研究に関する研究所間の相互理解が進み,その後の機構内 連携研究の推進に相当に寄与したと考えられる。
平成18年3月21日には,立花隆氏のコーディネート,自然科学研究機構主催で「自然科学の挑戦シンポジウム」 が東京・大手町で開催された。これは,一般の市民を対象に,機構の研究アクティビティーをアピールすることを目 的として,立花氏が企画して実現したもので,当日は約600名収容の会場がほぼ満席となる参加があった。このシン ポジウムの中で,「21世紀はイメージング・サイエンスの時代」と称して,イメージングを主題とするパネルディス カッションが組まれた。ここにはパネラーとして「イメージング・サイエンス」小委員会委員を中心とする講師によっ て,5研究所全てから,各研究所で行われているイメージング関連の研究の例が紹介され,最後に講師が集まりパネ ルディスカッションが開かれた。このシンポジウムの記録の出版は諸々の事情で遅れていたが,平成20年度にクバ プロから出版された。
平成18年12月5日−8日には,第16回国際土岐コンファレンス(核融合科学を中心とする国際研究集会)が核 融合研究所主催で土岐市において開催された。この会議ではサブテーマが“ A dvanced. Imaging. and. Plasma. D iagnostics” とされ,プラズマ科学に限らず,天文学,生物学,原子・分子科学を含む広い分野におけるイメージング一般に関す るシンポジウムとポスターセッションが企画された。分子科学研究所からも,数名が参加し,講演及びポスター発表 を行った。また平成19年8月23日−24日には,「画像計測研究会2007」が核融合科学研究所一般共同研究の一環 として,核融合科学研究所において開催された。平成20年11月10日−13日には,第39回生理研国際シンポジウ ムとして,“ F rontiers.of.B iological.Imaging—S ynergy.of.the.A dvanced.T echniques” が開催され,機構内のイメージングに 関わる研究者も数名(分子研1名)が講演を行った。平成22年3月21日には,再び立花隆氏のコーディネートによ る自然科学研究機構シンポジウム(東京で開催)において,イメージングサイエンスを取り上げた。平成22年12月 28日には,核融合科学研究所において,イメージングサイエンス研究分野所属の研究教育職員と様々な関連分野の 全国から研究者が集まり,「画像科学シンポジウム」が開催された。
5-3-3 シミュレーションによる 「自然科学における階層と全体」 に関する新たな学術分野の開拓
平成22年度より開始した本プロジェクトは,シミュレーションを利用した理論計算科学研究を推進することによ り,分子スケールからメソスケールにおける物質や生体の機能や物性に繋がる電子・分子ダイナミクスの多様性・階 層性の解明を目的とする。さらに,理論計算科学研究を越えて,分子スケールの機能や物性から固体物質,ソフトマ ター,生物における機能や物性の実験研究を通して分子の階層性の解明を進め,新たな分子科学すなわちポストナノ サイエンス分野の形成を目指している。
以上のポストナノサイエンス分野の形成を目指した研究活動に加え,ポストナノサイエンス分野における理論計算 科学分野のセミナー,さらに,人材育成を目的とし分子シミュレーションに関する講習会を開催した。さらに,理論 計算による自然界における階層と全体を俯瞰することを目的に,国立天文台および核融合科学研究所を中心とする理 論研究者と,M D シミュレーションとその応用,低電離プラズマ物理と磁気リコネクション,表面をキーワードにし た合同シンポジウムを開催した。
理論計算分子科学セミナー 5回
人材育成講習会「分子シミュレーションスクール—基礎から応用まで—」 平成 22 年 12 月 22 日〜 24 日 第1回所内ワークショップ 平成 22 年 10 月 28 日
三研究所合同シンポジウム 平成 23 年 1 月 18 日,19 日
5-4 アジア研究教育拠点事業「物質・光・理論分子科学のフロンティア」
(日本学術振興会)
21世紀はアジアの時代と言われている。分子科学においても欧米主導の時代を離れ,新たな研究拠点をアジア地 域に構築し,さらにはアジア拠点と欧米ネットワークを有機的に接続することによって,世界的な研究の活性化と新 しいサイエンスの出現が期待される。
日本学術振興会は,平成17年度より新たな多国間交流事業として,アジア研究教育拠点事業(以下アジアコア事業) を開始した。本事業は「我が国において先端的又は国際的に重要と認められる研究課題について,我が国とアジア諸 国の研究教育拠点機関をつなぐ持続的な協力関係を確立することにより,当該分野における世界的水準の研究拠点の 構 築 と と も に 次 世 代 の 中 核 を 担 う 若 手 研 究 者 の 養 成 を 目 的 と し て( 日 本 学 術 振 興 会 ホ ー ム ペ ー ジ よ り 抜 粋:http: // www.jsps.go.jp/j-acore/00gaiyou_ acore.html)」実施されるものである。分子科学研究所は,「物質・光・理論分子科学の フロンティア」と題して,分子科学研究所,中国科学院化学研究所,韓国科学技術院自然科学部,台湾中央研究院原 子分子科学研究所を4拠点研究機関とする日本,中国,韓国,台湾の東アジア主要3カ国1地域の交流を,アジアコ ア事業の一環として平成18年度にスタートさせた。アジアコア事業の特徴の一つとして,互いに対等な協力体制に 基づく双方向交流が挙げられる。本事業においても,4拠点研究機関のそれぞれがマッチングファンドを自ら確保し ており,過去5年間に渡って双方向の活発な研究交流が進展した。また,4拠点研究機関以外の大学や研究機関も研 究交流に参加した。平成22年度は最終年度である。これまでの5年間の活動の概要を以下にまとめる。
(1) 共同研究
物質分子科学においては,π電子系有機分子を基盤とする機能性ナノ構造体の構築と機能開拓,先端ナノバイオエ レクトロニクス,自己組織化金属錯体触媒の開発(以上,中国との共同研究),超高磁場 NMR を用いた蛋白質−ペプ チド相互作用の精密解析(韓国,台湾,香港との共同研究),バッキーボウルに関する合成・物性研究,アミロイドベー タの凝集と脂質二重膜との反応(以上,台湾との共同研究),新規遷移金属錯体触媒システムの開発(韓国との共同 研究)が進展した。
光分子科学においては,特異なナノ分子システムのナノ光学,テラヘルツ時間領域分光法を用いたジシアノビニル 置換芳香族分子の分子間振動および構造(以上,中国との共同研究),コヒーレントレーザー分光による反応ダイナミッ クスの解明(台湾との共同研究)が進展した。
理論分子科学においては,生体分子中における量子過程の計算機シミュレーション,ナノ構造体における光学応答 理論,タンパク質フォールディング病の分子動力学シミュレーション(以上,台湾との共同研究)が進展した。
(2) 共同セミナー
平成18年度は,「中国・日本グリーン化学合成シンポジウム」(中国・北京),「第1回物質・光・理論分子科学の フロンティア冬の学校」(中国・北京),「第1回全体会議」(日本・岡崎)が開催された。
平成19年度は,「中国・日本機能性分子の合成と自己組織化シンポジウム」(中国・北京),「日中ナノバイオ若手 研究者交流」(中国・北京),「有機固体の電気伝導と光伝導に関する日中合同セミナー」(中国・北京),「先端レーザー 分光シンポジウム」(日本・神戸),「次世代触媒創製を目指した機能物質シンポジウム」(中国・北京),「第2回物質・ 光・理論分子科学のフロンティア」冬の学校(日本・岡崎),「第2回全体会議」(韓国・デジョン)が開催された。
平成20年度は,「韓日生体分子科学セミナー—実験とシミュレーション」(韓国・ソウル),「中日機能性超分子構
築シンポジウム」(中国・北京),「ナノケミカルバイオロジーアジアコアシンポジウム」(日本・岡崎),「次世代触媒 創製を目指した機能物質シンポジウム」(韓国・デジョン),「元素の特性に基づいた分子機能に関する日中シンポジ ウム」(中国・北京),「第3回物質・光・理論分子科学のフロンティア」冬の学校(台湾・台北),「第3回全体会議」(中 国・北京)が開催された。
平成21年度は,「第2回日韓生体分子科学セミナー—実験とシミュレーション」(日本・名古屋),「日中機能性超 分子構築シンポジウム」(日本・札幌),「日韓分子科学シンポジウム「物質分子科学・生命分子科学における化学ダ イナミクス」」(日本・淡路島),「第4回物質・光・理論分子科学のフロンティア」冬の学校(韓国・ソウル),「中日 先端有機化学シンポジウム」(中国・上海),「第4回全体会議」(台湾・台北)が開催された。
平成22年度は,「第3回韓日生体分子科学セミナー—実験とシミュレーション」(韓国・済州島),「中日機能性超 分子構築シンポジウム」(中国・長春),「協同機能触媒」(米国・ハワイ),「総研大/アジアコアプログラム冬の学校」
(日本・岡崎),「中日触媒的合成化学シンポジウム」(中国・天津),「日韓有機金属化学シンポジウム」(日本・奈良),
「第5回全体会議」(日本・岡崎)が開催された。
5-5 ナノテクノロジーネットワーク事業「中部地区ナノテク総合支援」
(文部科学省)
5-5-1 概要
分子科学研究所は,平成19年度より平成23年度まで名古屋大学,名古屋工業大学,豊田工業大学の愛知県内機関 と連携して,文部科学省の先端研究施設共用イノベーション創出事業・ナノテクノロジーネットワークプロジェクト を受託し,中部地区ナノテク総合支援事業を展開している。中部地区にナノテクノロジー総合支援拠点を形成し,ナ ノ計測・分析(分子研・名工大),超微細加工(名大・豊工大),分子・物質合成(分子研)の3つの指定領域にわたっ て,超高磁場 N M R ,先進電顕等の最先端機器利用,有機・生体関連分子等の設計合成評価,最先端設備技術を用い た半導体超微細加工等を総合的に支援している。特に,各要素単体の支援に留まらず,4機関の特徴を活かした連携 融合支援を推進している。
分子科学研究所では,分子スケールナノサイエンスセンターが母体となり,超高磁場 N M R ,300k V分析透過電子 顕微鏡,時空間分解近接場光学顕微鏡,紫外磁気円二色性光電子顕微鏡などの先端機器利用や,有機・生体関連分子 等の設計合成評価,大規模量子化学計算支援を実行している。平成22年度は協力研究32件,施設利用22件(1月 13日現在)を採択し,うち協力研究14件,施設利用12件は実施した(来所予定確定分を含む)。所内利用も51件 に上っている(1月13日現在)。
表1に分子科学研究所が担当する支援装置・プログラムの一覧,表2に平成22年度採択課題一覧を示す。支援は, 担当研究者と共に研究を進めてゆく協力研究と,装置に関する十分な知識と経験を有する研究者が随時の申し込みに よって当該装置を利用する施設利用の何れかの申し込みを通して行われる。課題申請等の詳細は http: //nanoi ms. i ms. ac . j p/ にあり,本務の共同利用と同様に,通常申請(年2回)と随時申請がある。申請は分子スケールナノサイエン スセンター運営委員会の下部組織であるナノネット小委員会で審査される。本務の共同利用と異なり,本事業では産 業界からの申請も無償(ただし結果の公開が義務付けられる)で幅広く受け付けている。
なお,成果等に関しては本冊子8章の分子スケールナノサイエンスセンターの節に記載した。
表1 支援装置・プログラム一覧(分子科学研究所担当分)
支援装置・プログラム 装置・プログラムの概要 支援責任者 所属
近 接 場 分 光 イ メ ー ジ ン グ 支援(S NOM)
新 規 光 物 性,コヒーレ ント 光 制 御, 超 高 速 セ ン サ ー, 光加工・メモリ,エネルギー情報 伝達,ナノデバイス 等に向けたフェムト秒時間分解近接場顕微鏡支援。空 間分解能 50. nm,励起光 T i : sapphi re(780–920. nm. 100. fs)または各種CW。透過,ラマン,非線形に対応。超 高速分光を兼備した世界的に類のないオリジナル機器。
岡本裕巳教授 光 分 子 科 学 研 究領域
高 分 解 能 透 過 分 析 電 子 顕 微鏡支援(T E M)
ナノ粒子などの構造および電子状態解析のための電界 放 出 型 エ ネ ル ギ ー フ ィ ル タ ー 高 分 解 能 透 過 電 子 顕 微 鏡。J E OL J E M-3200,粒子像分解能 0.17. nm,格子像分 解能 0.10. nm。走査像観察,nm 領域の元素分析,液体 窒素冷却も可能。主に施設利用に対応。
西 信之教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
磁 気 光 学 表 面 ナ ノ 磁 性 評 価支援
新規磁性材料・ナノ磁性体の磁気特性観測を目的とし た紫外磁気円二色性光電子顕微鏡(U V . M C D . P E E M) と超伝導磁石X線磁気円二色性(X M C D )計測支援。 UV . MC D . PE E M は当グループ発見に基づく全く独創的 な機器。空間分解能 50. nm,超高速時間分解計測にも 対応予定。超伝導 X M C D は U V S OR 利用,7. T ,2. K 。 他に超高真空磁気光学 K err 効果測定装置(0.3.T ,100.K ) も提供。
横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
集 束 イ オ ン ビ ー ム 加 工 と 走査電子顕微鏡支援(S E M/ F IB )
集束イオンビーム加工と走査電子顕微鏡を提供。主に 施設利用に対応。
横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
X線光電子分光支援
(E S C A )
汎用のX線光電子分光器(Al,Mg-Ka線利用)を提供。 施設利用として気軽に利用いただける。
横山利彦教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
分 子 レ ベ ル 触 媒 設 計 と 構 造解析支援
各種固体触媒表面の設計手法により,分子レベルで固 体 触 媒 表 面 の 構 造 を 設 計 し, ま た, 固 体 N M R , 赤 外 分光,ラマン分光,X A F S 等の各種分光法を用いた固 体触媒の構造解析の支援,特に,触媒反応が進行して いるその場で in-situ 構造解析を重点的に支援する。
唯美津木准教授 物 質 分 子 科 学 研究領域
有機半導体デバイス・評価 支援
有機半導体を用いたデバイスや有機太陽電池の作製・ 評価を支援。結晶析出昇華精製装置,真空蒸着装置に よるデバイス作製,擬似太陽光源を用いた太陽電池特 性評価,S PM,X PS /U PS ,S E M,ミクロトーム等によ る有機半導体薄膜のナノ空間・電子構造の評価が可能。
平本昌宏教授 分 子 ス ケ ー ル ナ ノ サ イ エ ン スセンター
ナ ノ バ イ オ 素 子 機 能 形 態 解析支援(生体 T E M)
有機材料・ナノバイオ素子等の形態と機能を解析する ための高分解能透過電子顕微鏡 i n. si tu 観察支援。独創 的で世界的にも例のない位相差法を備えた生体関連物 質に特化した透過電子顕微鏡。電子顕微鏡元素イメー ジング法も併用可能。
永山國昭教授 生理研
超高磁場 N M R ナノ計測支 援
920M H z. N M Rに よ る 難 結 晶 蛋 白, 固 体 ナ ノ 触 媒, 有 機 − 無 機 複 合 コ ン ポ ジ ッ ト, カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ, 巨大天然分子などの精密構造解析支援。現状世界最高 レ ベ ル の 920M H z. N M R 。 固 体, 多 次 元, 3 重 共 鳴 に も対応。
加藤晃一教授 横山利彦教授
生 命・ 錯 体 分 子 科 学 研 究 領 域
大規模量子化学計算支援 ナノ分子系の構造・電子状態・機能の研究およびこれ らの設計と合成の高効率化のための高精度大規模量子 化学計算シミュレーション。クラスター PC 。
永瀬 茂教授 理 論・ 計 算 分 子 科 学 研 究 領 域
機 能 性 有 機 ナ ノ 材 料 設 計 支援
機能性有機ナノ材料,金属半導体クラスター,生体系 を規範とした有機ソフトナノ分子などの合成経路探索 設計。横山教授,鈴木・永田・櫻井准教授が各専門分 野の分子物質に対応。
鈴木敏泰准教授 永田 央准教授 櫻井英博准教授
分 子 ス ケ ー ル ナ ノ サ イ エ ン スセンター
920MHz 超高磁場 NMR によるアミロイドβペプチドの重合開始機構の構 造生物学的基盤の解明
920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いたタンパク質複合体の構造解析 920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いた自己集合性錯体の構造解析 S iC 表面分解カーボンナノチューブ生成法における清浄表面化処理に関 する研究
S iC 表面分解生成法におけるカーボンナノチューブの構造評価
連結方法の異なるポルフィリンオリゴマーの立体構造と電子状態の解明 複合糖質の超高磁場 NMR 装置による構造解析
T OF /T OF 質量分析を用いたバッキーボウル分子の解離フラグメントの解析 金ナノ粒子配列の近接場イメージング
重原子を骨格に含む新しい芳香族化合物の合成とその性質の理論的解明 高周期元素の特性を活かした新規ナノスケール分子の開発
単層カーボンナノチューブのアミンによる側面化学修飾法の開発 ナノサイズ分子キャビティを活用した活性化学種の反応性制御
柳 澤 勝 彦. 水 島 恒 彦 佐 藤 宗 太 丸 山 隆 浩. 丸 山 隆 浩 宇 野 英 満 山 口 芳 樹 佐 藤 義 倫 三 木 一 司 斎 藤 雅 一 時 任 宣 博 前 田 優 後 藤 敬 国立長寿医療センター研究所.
名古屋市立大学大学院薬学研究科 東京大学大学院工学系研究科 名城大学理工学部.
名城大学理工学部
愛媛大学大学院理工学研究科
(独)理化学研究所
東北大学大学院環境科学研究科
(独)物質・材料研究機構 埼玉大学大学院理工学研究科 京都大学化学研究所 東京学芸大学教育学部 東京工業大学大学院理工学研究科
. 課 題 名(後期). 支援装置. 代 表 者
920MHz 超高磁場 NMR によるアミロイドβペプチドの重合開始機構の構 造生物学的基盤の解明
920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いたタンパク質複合体の構造解析 920MHz 超高磁場 NMR 装置を用いた自己集合性錯体の構造解析 S iC 表面分解カーボンナノチューブ生成法における清浄表面化処理に関 する研究
S iC 表面分解生成法におけるカーボンナノチューブの構造評価 複合糖質の超高磁場 NMR 装置による構造解析
T OF /T OF 質量分析を用いたバッキーボウル分子の解離フラグメントの解析 金ナノ粒子配列の近接場イメージング
連結方法の異なる核置換ポルフィリンオリゴマーの立体構造と電子状態 の解明
有機分子/磁性金属ヘテロ構造に於ける電子スピン状態分光.
重原子を骨格に含む新しい芳香族化合物の合成とその性質の理論的解明 高周期元素の特性を活かした新規ナノスケール分子の開発
単層カーボンナノチューブのアミンによる側面化学修飾法の開発 ナノサイズ分子キャビティを活用した活性化学種の反応性制御 スマネン誘導体を1次元精密配列することよる機能性物質探索
シクロペンタジエンとの環化付加反応を用いた常磁性 L a@ C82の化学修飾 常磁性金属内包フラーレン配位子の合成と性質
柳 澤 勝 彦. 水 島 恒 彦 佐 藤 宗 太 丸 山 隆 浩. 丸 山 隆 浩 山 口 芳 樹 佐 藤 義 倫 三 木 一 司 宇 野 英 満. 松 本 吉 弘. 斎 藤 雅 一 時 任 宣 博 前 田 優 後 藤 敬 岡 崎 俊 也 赤 阪 健 土 屋 敬 広 Marek.Przybylski 奥 山 弘 国立長寿医療センター研究所.
名古屋市立大学大学院薬学研究科 東京大学大学院工学系研究科 名城大学理工学部.
名城大学理工学部
(独)理化学研究所
東北大学大学院環境科学研究科
(独)物質・材料研究機構 愛媛大学大学院理工学研究科. 日本原子力研究開発機構先端基 礎研究センター
埼玉大学大学院理工学研究科 京都大学化学研究所 東京学芸大学教育学部 東京工業大学大学院理工学研究科
(独)産業技術総合研究所 筑波大学生命領域学術研究センター 筑波大学生命領域学術研究センター Max-Planck.Institut.(Halle,.Germany) 京都大学大学院理学研究科
5-5-2 平成 22 年度採択課題一覧(分子科学研究所担当分)
(1) 協力研究
. 課 題 名(前期). 支援装置. 代 表 者
NMR . NMR NMR E S C A . T E M 有機材料 NMR 有機材料 S NOM 量子計算 量子計算 量子計算 量子計算
NMR . NMR NMR E S C A . T E M NMR 有機材料 S NOM 有機材料. 磁気光学. 量子計算 量子計算 量子計算 量子計算 有機材料 量子計算 量子計算 磁気光学 磁気光学
(2) 施設利用
. 課 題 名(前期). 支援装置. 代 表 者
自己組織化に分子配列を制御したポリマー太陽電池の開発 フッ化物薄膜を用いた紫外線検出器開発
超高磁場固体 NMR によるラセン高分子の動的構造解析 ナノ領域の特異現象と 46 億年前の微粒子形成
Pt 細線加工と観察
大電流パルススパッタを用いたナノ構造制御成膜法による C r2N 皮膜の構 造解析および評価
固体 NMR によるゴムの劣化メカニズム解明 発光性シリコンナノクラスターの構造評価
林 靖 彦 小 野 晋 吾 平 沖 敏 文 木 村 勇 気 伊 藤 俊 幸 塚 本 恵 三. 小 林 将 俊 根 岸 雄 一 名古屋工業大学大学院工学研究科
名古屋工業大学大学院工学研究科 北海道大学大学院工学研究科 東北大学大学院理学研究科 テラベース(株)
(株)アヤボ. 住友ゴム工業(株) 東京理科大学理学部 有機半導体
S E M/F IB NMR T E M S E M/F IB T E M. NMR T E M
. 課 題 名(後期). 支援装置. 代 表 者 自己組織化に分子配列を制御したポリマー太陽電池の開発
フッ化物薄膜を用いた紫外線検出器開発
超高磁場固体 NMR によるラセン高分子の動的構造解析 ナノ領域の特異現象と 46 億年前の微粒子形成
Pt 細線加工と観察
大電流パルススパッタを用いたナノ構造制御成膜法による C r2N 皮膜の構 造解析および評価
固体NMRによるゴムの劣化メカニズム解明
カーボン系および非カーボン系薄膜材料の開発および物性評価 ヒアルロニダーゼ阻害活性を有するシソ科植物成分の構造解析 各種光学デバイス開発時のメカニズム解明および最適技術の確立 プラズモン誘起化学反応解析のための貴金属ナノ構造体の形状分析. ガングリオシド GM2 及びウコン色素クルクミンの構造解析
林 靖 彦 小 野 晋 吾 平 沖 敏 文 木 村 勇 気 伊 藤 俊 幸 塚 本 恵 三. 小 林 将 俊 滝 沢 守 雄 宮 瀬 敏 男 荒 川 達 士 井 村 考 平. 中 塚 進 一 名古屋工業大学大学院工学研究科
名古屋工業大学大学院工学研究科 北海道大学大学院工学研究科 東北大学大学院理学研究科 テラベース(株)
(株)アヤボ. 住友ゴム工業(株)
(株)鈴寅
静岡県立大学薬学部
ソニーイーエムシーエス(株) 早稲田大学理工学術院先進理工 学部
岐阜大学応用生物科学部 有機半導体
S E M/F IB NMR T E M S E M/F IB T E M. NMR S E M/F IB NMR S E M/F IB T E M. NMR カーボン系および非カーボン系薄膜材料の開発および物性評価
大電流パルススパッタを用いたナノ構造制御成膜法による C r2N 皮膜の構 造解析および評価
滝 沢 守 雄 塚 本 恵 三
(株)鈴寅
(株)アヤボ S E M/F IB
S E M/F IB
5-6 最先端・高性能スーパーコンピュータの開発利用
次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発
(文部科学省)
分子科学研究所は,平成18年度より平成23年度まで「最先端・高性能スーパーコンピュータの開発利用」プロジェ クトにおける「次世代ナノ統合シミュレーションソフトウエアの研究開発」拠点としてナノ分野の「グランドチャレ ンジアプリケーション研究」を推進している。我々は「次世代スパコン」プロジェクトの一環として,わが国の近未 来の学術,産業,医療の発展に決定的なブレークスルーをもたらす可能性をもつ三つのグランドチャレンジ課題を設 定し,その解決を目指して,理論・方法論およびプログラムの開発を進めてきた。
(1) 次世代ナノ情報機能・材料
. ナノ物質内の電子制御をシミュレートできる方法論を確立する。 (2) 次世代ナノ生体物質
. ナノスケールの生体物質に対して,自由エネルギーレベルでの相互作用,自己組織化,また動的な振る舞いを シミュレートできる方法論を確立する。
(3) 次世代エネルギー
. 高効率の触媒・酵素の設計ができる方法論を確立する。
これらのグランドチャレンジ課題はいずれも従来の物理・化学の理論・方法論の「枠組み」あるいは「守備範囲」を はるかに超えた問題を含んでおり,ただ,単に計算機の性能が飛躍的に向上すれば解決するという種類の問題ではな く,物理・化学における新しい理論・方法論の創出を要求している。さらに,構築が予定されている「次世代マシン」 は従来の常識をはるかに超えるノード数からなる超パラレルプロセッサーであり,プログラムの高並列化を始めとす る「計算機科学」上のイノベーションをも要求している。
「ナノ統合拠点」は上記の三つのグランドチャレンジ課題を解決するために必要な理論・方法論およびプログラム の開発を進めると同時に,その実証研究を進めてきた。平成22年度に遂行した主な課題は下記のとおりである。
5-6-1 中核アプリを中心とする「次世代ナノ統合ソフトウエア」開発
我々が開発しているアプリケーションは3つの階層構造から成り立っている。
中核アプリ:ナノ分野の研究にとって基本的な量子力学,統計力学,分子シミュレーションに関する6本のアプリケー ション。
付加機能ソフト:上記6本のアプリケーションを様々に組み合わせて,マルチスケール・マルチフィジックス問題を 解決したり,構造探索を効果的に行なうなどの目的に対応するプログラム群。
連携ツール:「中核アプリ」と「付加機能ソフト」をシームレスに連結するためのツール群および蛋白質一次配列情 報やポテンシャルパラメタなどの初期インプット情報を生成するためのプログラム。(資料1)
資料1
「中核アプリ」に関する平成22年度の進捗状況は下記の表にまとめてある。
2010年度は,筑波大学 T 2K ,名古屋大学 F X 1 を利用した高並列化に向けた高度化を継続実施した。特に,筑波大 のご協力を得て,大規模高並列(1 万コア並列)テストを3回実施(通算4回)した。中核アプリ6本について,目
標を達成しつつある。また,理研と共同でカーネル評価を実施し,次世代スパコン京の 400 ノードを利用する代行実 行も開始した。
5-6-2 「アプリケーション実証研究」および「連続研究会」
ナノ分野における「アプリケーション実証研究」および「連続研究会」を実施した。これらの研究活動は,2008年, 外部評価委員会(魚崎浩平委員長)のアドバイスに基づき開始したものである。そもそも本拠点は前に述べた3つの グランドチャレンジ課題を解決する目的で「次世代スパコン」上で最大限の性能を発揮するアプリケーション群の開 発を目指しているが,個々のアプリケーションは,問題を限定すれば,現在,稼働中のマシンを使用することにより, 実験研究者が直面しているいくつかの問題の解決に有効である可能性をもっている。そこで,まず,解決を迫られて いる「ナノ分野」の課題を抽出するため,大学における実験研究者,企業研究者,および計算科学者を含む「連続研 究会」を電子デバイス,ライフサイエンス,環境・エネルギーの広汎な分野で企画した。この連続研究会は20回に およぶ。以下の表に,2010年度の連続研究会の開催状況を示す。その規模と広がりから,研究者の中に全国的な反 響を巻き起こすと同時に,その中からすでに実験研究者と計算科学者の間で,いくつかの共同研究が生まれ,具体的 な成果に結びついている。例えば,「抗がん剤を使わない癌治療法(上岡教授)に関する計算科学的サポート(岡崎 グ ル ー プ: 上 岡 教 授( 崇 城 大 学 ) と の 共 同 研 究 )」, あ る い は,「 カ リ ウ ム チ ャ ネ ル の イ オ ン 選 択 性 に 関 す る 3D -. R IS M 計算(平田グループ: 老木教授(福井医科大)との共同研究)は,その例である。
平成22年度,総合科学技術会議(C S T P)からも,次世代スパコンのグランドチャレンジ研究の成果を期待する旨 のコメントがあり,国民にアピールできる成果を目指してアプリ実証研究を推進している。
以下に,プロジェクト開始時からの研究成果を表にまとめた。
5-6-3 プログラム公開に向けた取り組み
本プロジェクトは,国家プロジェクトであり,そこで開発されたプログラムは「公開」を原則とする。一方,本プ ロジェクトで開発されたプログラムの多くは過去の履歴をもっており,公開に関しては様々な制約を帯びている。同 時に,本プロジェクトで解決を目指している課題の多くは新規の理論や方法論の開発など基礎研究の要素をもってお り,研究者(開発者)のクレジットやプライオリティが保証されなければならない。
このため,本プロジェクトでは,成果の公開と研究に対するクレジットの尊重のバランスを取り,プログラム開発 者が公開条件を設定することとし,関係機関の了解も得た。なお,公開するナノ統合ソフトの一覧を文末の表に示す。 また,プログラム情報は http://pal.ims.ac.jp/ で公開している。
5-6-4 今後の課題と取り組み
本プロジェクトは,平成23年度で終了するため,これまでの開発計画を継続しながらプロジェクト完了に向けた 取り組みを強めていく。
第1は,本プロジェクトの一義的ミッションである「中核アプリ」および重要な「付加機能ソフト」の次世代機に 向けた高度化および次世代スパコン京実機での検証と動作確認である。また,公開に向けたマニュアル整備等を進め る。
第2は,「アプリ実証研究」および「連続研究会」であるが,これらの活動については,平成20年度に行なわれた 外部評価委員会からのアドバイスおよび平成21年暮れの「仕分け作業」,更に平成22年度の C S T P のコメントを踏 まえて,「何のために『次世代スパコン』が必要か?」,「『次世代スパコン』でどんな素晴らしいことができるか?」 という国民の問に端的に答え得る「課題提示」が必要である。
5-7 最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム
(文部科学省)
文部科学省は,平成20年度より新たな拠点形成事業として,「最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点 プログラム」(以下,光拠点事業)を開始した。本事業は「ナノテクノロジー・材料,ライフサイエンス等の重点科 学技術分野を先導し,イノベーション創出に不可欠なキーテクノロジーである光科学技術の中で,特に,今後求めら れる新たな発想による最先端の光源や計測手法等の研究開発を進めると同時に,このような最先端の研究開発の実施 やその利用を行い得る若手人材等の育成を図ることを目的として(文科省ホームページより抜粋:http://www.mext.
go.jp/b_menu/houdou/20/07/08072808.htm)」実施される。具体的には,光科学や光技術開発を推進する複数の研究機関
が相補的に連結されたネットワーク研究拠点を構築し,この拠点を中心にして(1)光源・計測法の開発;(2)若 手人材育成;(3)ユーザー研究者の開拓・養成を3本柱とする事業を展開する。
この光拠点事業の公募に対して,分子科学研究所は,大阪大学,京都大学,日本原子力研究開発機構とともに,「融 合光新創生ネットワーク」と題したネットワーク拠点を申請し,採択された(http://www.mext.go.jp/b_ menu/houdou/20 /07/08072808/003. htm)。本年度で3年目を迎えるが,既にこの拠点を舞台に,世界の光科学を牽引する多くの素晴ら しい研究成果や人材が生み出されつつある。なお,この他にもう1件,東京大学,理化学研究所,電気通信大学,慶 応義塾大学,東京工業大学によって構成される「先端光量子アライアンス」と題されたネットワーク拠点が採択され ており,これら二つの異なる拠点間の交流による新たな展開も進みつつある。
平成22年度の分子科学研究所における活動内容を以下にまとめる。
(1) 光源要素技術の開発
Q U A D R Aレーザー開発のための要素技術として,マイクロドメイン制御に基づく超小型高輝度高品位レーザーの 開発を行い,従来の MgL N における世界記録 5mm 厚を上回る 7mm 厚 PPMgL N の作製に世界で始めて成功した。また, QU A D R Aレーザー開発のための要素技術として,. 超広帯域(3–20. µm)中赤外コヒーレント光源の開発において,超 広帯域のスペクトルを測定するために,真空中でも動作するフーリエ分光器を自作した。
(2) 供用技術の開発
超高精度量子制御技術では,世界最速スパコンより 1000 倍速くナノより小さい分子コンピュータを開発した。また, 強いレーザーパルスで波動関数を書き換える新技術を開発した。また,大規模な構造変形をコヒーレントに誘起する ことに成功した。時空間分解顕微分光では,近接場光学顕微鏡のプローブ先端で高い時間分解能を得るための技術を 開発した。超高速分光技術の開発では,極短パルス強レーザー場における分子過程とその応用に関して,(1)4 体クー ロン爆発反応イメージングを用いた水素移動に伴う立体構造変化の実時間追跡;(2) 電子−イオンコインシデンス計 測による近赤外非共鳴2重イオン化過程の解明;(3) 光のゆらぎによる深紫外非線形原子過程の解明,などの成果が あ っ た。 ま た, 本 ネ ッ ト ワ ー ク に お け る 供 用 研 究 の 推 進 に 寄 与 す る 各 種 研 究 会 の 開 催 に つ い て は,「Workshop of Consortium for Photon Science and Technology “Nonlinear Optics for Highly Intense Lasers”」と題した国際シンポジウムを,
平成22年10月21日に分子科学研究所にて開催した。
(3) 人材育成体制の強化
他の参加機関との議論を通じて,次年度以降の教員や学生の具体的な交流方法を検討した。また,大森教授が名古 屋大学グローバル C OE プログラム「分子性機能物質科学の国際教育研究拠点形成」[化学系セミナー]で講義を行った。 また,総研大において,光科学に資する人材育成のための講義を行った。この際,今後の活用を目指して e- l earni ng 教材を製作した。
5-8 光・量子科学研究拠点形成に向けた基盤技術開発
「量子ビーム基盤技術開発プログラム」 (文部科学省)
量子ビーム技術は,ビーム発生・制御技術の高度化に伴って近年大きく発展してきており,基礎から応用に至るま での幅広い分野で活用されてきている。量子ビームの研究開発を戦略的・積極的に推進するとともに,次世代の量子 ビーム技術を担う若手研究者の育成を図ることを目的として,平成20年度より「量子ビーム基盤技術開発プログラム」 が開始された。本事業では,基盤技術としての量子ビーム技術の発展と普及に資するべく,汎用性・革新性と応用性 が広い研究テーマについて,ネットワーク研究体制を構築しながら研究開発を行うことを目的としている。
本研究所からは,極端紫外光研究施設を利用した「リング型光源とレーザーを用いた光発生とその応用」という課 題名で提案を行い,採択された。本研究所を中核とし,名古屋大学,京都大学の参画を得て,平成20年度より5年 計画で実施する。U V S O R - I I 電子蓄積リングの改造,ビームラインの建設などを含む計画であり,レーザーを用いる ことで特色あるシンクロトロン光を作り出し,その利用法の開拓を行おうとしている。具体的には,コヒーレントシ ンクロトロン放射と呼ばれる機構を利用した大強度テラヘルツパルス光の発生,コヒーレント高調波発生と呼ばれる 機構を利用した大強度極紫外線パルス光の発生,また,これらの実用化及び利用法の開拓である。分子科学研究所が 中核となり,名古屋大学では光源技術に関する研究開発,京都大学では利用に関する研究開発を行う。
今年度,分子科学研究所では,平成20,21年度に引き続き U V S O R - I I 電子蓄積リング改造のための加速器及び機 器の設計・製作,レーザー装置の増強などを進めた。平成22年春には加速器の大幅な改造を実施し,新しい光源装 置の設置スペースを創出した。既存の実験装置を用いた光源開発研究も並行して実施するとともに,ビームラインの 設計,利用法に関する検討も進めている。平成22年2月には,プログラムオフィサーなども交え,分子研および参 画機関のメンバーによる検討会を開催し,今後の研究の進め方について議論を行った。
5-9 若手研究者交流支援事業〜東アジア首脳会議参加国からの招へい〜
(日本学術振興会)
5-9-1 全体趣旨
本事業は,安倍晋三内閣が第2回東アジア首脳会議(E A S 2007)の時に提唱した,E A S 参加国から今後5年間, 毎年 6,000 人程度の青少年を日本に招へいする交流計画(J E N E S Y S プログラム)に基づいた J S P S の事業である。次 世代を担う若手研究者の計画的な交流により,アジアを中心とした国々との研究者間のネットワークの形成・強化, 当該地域における高度人材育成及び科学技術コミュニティの形成等が期待される。対象国は A S E A N 加盟国(インド ネシア,カンボジア,シンガポール,タイ,フィリピン,ブルネイ,ベトナム,マレーシア,ミャンマー,ラオス) で あ る が, 全 体 の 30% 以 内 で あ れ ば, オ ー ス ト ラ リ ア, ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド, イ ン ド を 含 め る こ と が 可 能 で あ る。 2010年10月から2011年9月までのプログラムで第3期となり,分子研は第1期より3期連続で採択されている。 また,関連プロジェクトとして,J A S S O の事業としての J E NE S Y S プログラムにも2011年度において採択され,10 月より半年間の予定で,総研大事業として大学院生に限定した形で招へいを行った。
5-9-2 分子研主催プロジェクト課題について
プロジェクト課題名は,「『環境・エネルギー』基礎研究基盤の確立」である。
現代自然科学が解決すべき問題のひとつである環境・エネルギー問題において,東アジア諸国における自国での研 究開発を可能にするための基礎研究基盤の確立は極めて重要である。本交流事業においては,環境・エネルギー問題 に関わる基礎科学に関して,主として学位取得前後の若手研究者を広く招へいし,また本交流事業後のフォローアッ プとしての共同研究体制を確立し,自国における基礎研究の継続を力強くサポートすることで,基礎科学の定着を推 進することを目的にする。
分子科学研究所は,国際交流の重要性に鑑み,かねてより様々なチャネルを通じて国際共同研究,研究支援,教育 事業を推進してきた。本交流事業は,教育事業に特化した「アジア冬の学校」を研究者養成事業へと発展し,最終的 には,既に基盤研究機関が充実している極東アジア諸国間で形成している研究教育拠点ネットワークを東アジア諸国 へ伸展させる,橋渡し的事業となることが期待される。
5-9-3 実施状況
第2期では,23研究室(うち分子研20,所外3)を受入研究室として指定し,公募を原則とした募集を行った。 各候補者に対し,research. proposal および帰国後の future. plan の提出を求め,その妥当性や将来性等に関して審査する ことにより決定した。
実際の募集は,
(1) 指定交流相手機関からの推薦(学内公募を原則) (2) ホームページを利用した公募
の順で行った。指定交流相手機関は以下の通りである. :チュラロンコーン大学(タイ),マラヤ大学(マレーシア) 南洋工科大学,シンガポール国立大学(シンガポール)ベトナム科学技術アカデミー(ベトナム)。また前回に引き 続き,継続的な基礎研究,共同研究を奨励する目的で,過去の参加者の中から希望者に対し,再度 researc h. proposal および帰国後の f uture. pl an の提出を求めて審査を行い,招へい費用の一部を援助し,再来訪による共同研究の継続を 支援する「revisit.program」も同時に募集した。
その結果,指定交流機関からの推薦6名,公募5名,リビジットプログラム2名,計13名の招へいを実施した。 国別では,マレーシア1名,シンガポール2名,タイ5名,ベトナム2名,インド1名と,これまでと同様タイから の採択が最も多くなった。このことは,タイ国内において既に本事業が高い評価を受けていることを意味しており, 実際非常に多くの応募がタイから寄せられている。またキャリアの内訳は,博士研究員7名,博士課程学生6名となっ た。
招へいは,2010年4〜8月にかけて実施され,各研究者に応じて,32〜90日の期間での研究プログラムが組ま れた。今期からは最大滞在期間を90日に延長することが可能となったため,60日を限度としていた前回までと比べ, より充実したプログラムとなった。また5月28日に,全員の招へい者を一同に会し,全体会議とミニシンポジウム を開催した。本プログラムの大きな目的のひとつとして,将来にわたるアジア分子科学ネットワークの形成があり, 各国の同世代の若手研究者の横のつながりを形成する上でこの全体会議の役割は非常に大きく,実際参加者からは複 数回の実施を希望する意見もあったほどである。
一方,J A S S O-J E NE S Y S プログラムに関しては,上記5カ国にフィリピンを加えた計6カ国より7名の大学院生(う ち1名は学術交流協定先のタイ,チュラロンコーン大学)を特別聴講学生として招へいし,2010年10月より半年 間のプログラムを行い,2011年2月20日には,アジア冬の学校のプログラムの一部として全体会議とミニシンポ ジウムを開催した。
一昨年より計4期にわたる本 J E NE S Y S プログラムで招へいしたアジアの若手研究者は,延べ44名となり,分子科 学研究所の知名度向上のみならず,アジア分子科学ネットワーク形成に大きな影響力を与えつつある。